おはようございます。
梅つま子です。
伊是名夏子さんの『ママは身長100cm』を読みました。
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伊是名夏子さんについて
夏子さんは、1982年、沖縄生まれ。
生まれつき骨の弱い「骨形成不全症」という障害をお持ちで、電動車いすを使用して暮らしていらっしゃいます。
本のタイトルのとおり身長は100センチだそう。
もちろん、その生活は想像もつかないくらいとても大変そうだ、と思うのですが、
快活な方だとすぐにわかりました。
夏子さんは、ハイリスクな妊娠・出産を乗り越えて、2人のお子さんを育てていらっしゃいます。
「障害者は助けてもらうのではなく、お互いに助け合う存在」をテーマに全国で講演をされていて、性教育についても積極的に取り組んでいらっしゃるんです。
デンマークへの留学経験がおありで、ブログには、ご家族でのオーストラリア旅行のことも読むことができます。
とても活動的な方です!
夏子さんのコーディネート力
夏子さんの本を読んでいて、気づかされたのは、
夏子さんが非常に上手にまわりの方に配慮する力をお持ちだということです。
これがとても印象的なんです!
夏子さんの暮らしを、一日3交代で、合計10人のヘルパーさんが支えていらっしゃるそうです。
ヘルパーさん、お子さんたちや旦那さん、そして夏子さん。
みんなで素敵なコミュニティを作られているのがわかりました。
障害のある先輩ママから「子育ては大変だけど、子どもの力でいいヘルパーさんたちが集まってくるよ」と言われたのですが、まさしくその通り!
子どもがいるからこそ、子ども好きの、いいヘルパーさんが集まってくれます。
私とヘルパーさん、2人だけでずっと過ごしていると、ギスギスすることもあるでしょうが、子どもがいることで潤滑油になってくれます。
『ママは身長100cm 』(129ページ)
そして、夏子さんにもヘルパーさんにも、人それぞれ、得意や不得意があるし、お互いに気分というものもある。
それを無理に変えることなく付き合ってこられる知恵と辛抱強さ、あえてのお気楽さ。
これらは私の人生にも確実に必要なものなので、夏子さんがそれをどうやっているか、非常に参考になりました。
ヘルパーさんが気づいたことがあれば、なるべく遠慮せずに伝えてもらいます。
もちろん私の家なので譲れないことや、嫌な気持ちになることもあります。でもそんな時は「そっかー」「今は余裕がないからいいや」と言って聞き流します。
たとえばレトルト食品などを置いてあるキッチンの引き出しを開けたヘルパーさんに「ぐちゃぐちゃで物が取りづらい。賞味期限切れのもあるよ」って言われても、私の気が乗らないときは「うーーん、今はいいや。また時間があるときに考える」と流すのです。『ママは身長100cm 』(134ページ)
上記の「うーーん、今はいいや。また時間があるときに考える」って、いい言い方ですよね!
これなら、自分の心も守ることができるし、言われた相手が、嫌な気持ちになりにくい。
助言を受けたときって、言われた一言に傷つくこともありますよね。
さらに、相手が「言い過ぎちゃったかな」、「言わなきゃよかった」と思ってしまったり。
夏子さんの言葉は、言った側も言われた側も「ずーん…」と沈まなくて済むような、絶妙な言い方だ!とひざを打ちました。
こんなふうに、相手が不快にならない言葉、でもちゃんと自分の気持ちを伝えられて、今後も自分を尊重してもらいやすくなるようなモノの言い方が、本書の中にいっぱい。
真似させてもらいたいと思いました。
(夏子さん、「できるオトナの言葉の使い方辞典」とか、出版してくれないかしら。笑)
また、主張の仕方も素晴らしいと思いました。
合理的でありつつ、感覚を大事にしていることがわかります。
(太字強調は梅つま子によるものです。以下同様)
自分の気持ちを説明できると、まわりが味方になってくれることもあるのです。
「このカフェ嫌い、落ち着かない」というのではなく、「昔の嫌なこと思い出してしまうから、他のカフェに行きたい」と伝えることができると相手を説得しやすいのです。
『ママは身長100cm 』(165ページ)
この知恵は、夏子さんがご自分の意見を誰かに伝えるときにも生かされています。
自分の考えを伝えるときも、「これは私の考えだからあなたに当てはまるか分からないんだけど」と前置きをすることも心がけています。
だって反対意見や過剰なアドバイスを聞き続けると、やりたいことを口にできなかったり、自分の気持ちを考えないようにしたり、わがままなのかもしれないと自分を責めてしまうことがあるからです。
『ママは身長100cm 』(200ページ)
はっと気づかされたのは、夏子さんの高校時代のこの経験。
プールでの授業でのことです。
階段を降りるため、水着に着替えた私を、男性の先生が抱っこしようとしたとき、「なっちゃん嫌でしょ。私が抱っこするよ」と女子の友達がやってくれました。
そのとき初めて「おかしいと感じてもいいんだ。嫌と言っていいんだ」と思ったのです。
自分の中でふたをしていた感情に気づいて、動いてくれる人がいたからこそ、初めて気づくことができたのです。
「障害があるから、助けてもらう必要があるから、女性性を大事にできなくても仕方ない」ではないのです。
「障害があっても女性性を大事にしていい。一緒に考えよう」と言ってくれる人がほしいのです。
『ママは身長100cm 』(169ページ)
この、「なっちゃん嫌でしょ。私が抱っこするよ」と言えたお友達、素敵ですよね。
私もこういうふうに、相手の感情に気づいてさっと助け舟を出せるような人になりたい!
そして、私が感じた不快なんて夏子さんのそれに比べれば比較にもならないけど、
自分にも似たような経験がありました。
出産のために入院したときに、特に初めての出産では、
「こんなことで看護師さんを困らせてはいけない」「痛いけどこれは当たり前なんだ」
みたいに自分に言い聞かせていました。まるで、自分ハラスメント。
「おかしいと感じてもいいんだ。嫌と言っていいんだ」
当たり前のようでありながら、これを自分に許すのってかなり難しいことです。
大事なのは、自分が自分のために考えることであり、一緒に考えようとしてくれる誰かを探すこと。探してもいいんだと思うこと。
自分への優しいまなざしを持ちたいものです。
私たちみんなです。
これからすぐに、私たちができること
この本に、「すぐにでも、できることがあるよ」と教えてもらいました。
突然ですがクイズです。
新宿から表参道まで、電車と地下鉄で約20分でいけるそうです。
では、車いすを使うと、どれくらいかかるでしょうか?
いったいいくつのエレベーターに乗るでしょうか?
答えはこちらに。
私はこの動画を見て、
「そうか、乗りたい電車が到着したとしても、向こうの駅で駅員さんがスロープを出す準備ができてなければ乗れないんだ」と、そんな当たり前のことにも初めて気づきました。
(降りられないですもんね。そのまま乗り続けるしかなくなっちゃう…!!!)
待ち、待ち、待ち、どれだけ待たなければいけないことか!
この動画を見てから、エレベーターを待つことについて書かれた部分を読むと、ものすごく申し訳なくなりました。
車いすの方がエレベーターを待っているときというのは、「今待っている」だけじゃない。
「今ここに来るまで」に、いくつものエレベーターに乗ってきているはず。
そして、「これから帰宅するまで」に乗るエレベーターでも、おそらくたくさん待つことになるだろうからです。
乗れない私を見て、エレベーターの中の人達は無言で目を合わせません。
まるで「私たちも並んで乗ってきたし、次に乗ってください」と言っているようです。
「いや、次もきっと乗れないんですけど」と内心つぶやく私。
ドアは微妙な雰囲気のまま閉められます。
私は2回待っても乗れなかったら、3回目は自分から「すみません!2回待っていても乗れないので、だれか譲ってもらえませんか」と言うことにしています。
そんなこと言いたくないのですが、黙っていてはいつまでも乗れないのでしかたありません。
(中略)
そしてあなたも急いでいたり、疲れていたり、体調が悪いとき、怪我をしているときは遠慮せずにどんどん優先席に座り、エレベーターを使ってください。
できるときに、できる人が譲るだけ。
それだけなのです。
それが広まってほしいです。
『ママは身長100cm 』(225~227ページ)
今までも「どうぞ」は、言えるときは言おうとしていたし言ってきたつもりだけど、
これからは、その「どうぞ」を、もっと気軽に、もっと当然のものとして口に出せそうです。
終わりに
自分の不快に率直であること。
ストレートに要望を伝えること。
でも、ちゃんとまわりの気持ちを考えること。
これらを全部立たせるのは難しいけど、夏子さんは成し遂げている。
夏子さんが人生をかけて探索してきた、人との付き合い方、自分との付き合い方、言葉の使い方。
それらを知ることで、「モノの見方を変えることで、世界の見え方や、周囲との付き合い方、自分の扱い方は、グッと改善できそうだ」と感じることができた一冊でした。
知恵ときらめきにあふれた本なので、ぜひ読んでみていただきたいです
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今日もいい一日になりますように!