明日も暮らす。

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シンプルで暮らしやすい生活を目指しています。オンライン英会話(英検1級)と空手(黒帯)が趣味。大学院博士課程修了(人文科学)。2児の母。

住野よる『君の膵臓をたべたい』を読んで、自分の薄っぺらさを感じてしまった話。

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おはようございます。

梅つま子です。

 

お正月が開けた先日、なんだかものすごく、小説の世界に浸りたくなって、

図書館で借りた文庫本を一冊、一気読みしました。

 

住野よる 双葉社 2017年04月27日頃
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カフェで3時間くらい長居して、他のことはせず、ただじーっと読んでました。

こんなに集中したの、いつぶりか。

 

この記事では、盛大にネタバレしますので、

「まだ読んでいない、結末もディテールも知りたくない」という方はページを閉じてくださいませ~!

 

(そして、読み終わったらぜひまた来てくださーい!誰かに語りたい!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで本書。

本屋大賞の2位を受賞したので有名ですね。

 

ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。
それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて――。
読後、きっとこのタイトルに涙する。デビュー作にして2016年本屋大賞・堂々の第2位、
75万部突破のベストセラー待望の文庫化!

君の膵臓をたべたい

 

これ、高校生男女の友情(恋愛未満の)物語なんですが、

おそらく時間がなかったために(主人公の女の子が死んでしまうから)、

この物語の中では恋愛に発展しなかったんだけれども、

むしろ恋愛関係に発展しないから、純度が高いというか、

けっこうに沸騰寸前というか爆発目前に高まった状態が、

物語のほぼ最初から最後まで持続します。

 

そう、私の感覚では、

もう物語の序盤から、二人は付き合ってていいレベルの仲のよさなのです。

よくその状態を維持できるね

と私は思い、

自分の恋愛に対する耐性というか、堪え性のなさを自覚しました。

 

みんな…ねえ…ここまで我慢するの?

 

メインキャラクターの男の子のほう、

友達がいないから人間関係を学んだことがなくて、

それゆえに待ちか防御、流されるしか手が無い志賀春樹はしょうがないとして、

女の子の山内桜良はそれなりにこれまで彼氏がいて経験を積んできたんだから、

もっとなんとかできなかったのか。

 

「君は、きっとただ一人、私に真実と日常を与えてくれる人なんじゃないかな。」

(『君の膵臓をたべたい (双葉文庫)』p.75)

 

「君だけは真実を知りながら、私と日常をやってくれてるから、私は君と遊ぶのが楽しいよ」

(『君の膵臓をたべたい (双葉文庫)』p.75)

 

そんなこと言ってないで早く!!!

早く動けえ!!!!

あなたに残された時間は少ないのだ!!!!!

 

としか思わなかったです…はあ…!

 

しかし、

この二人の掛け合いはウィットにとんでて面白いので、

焦らされている感覚はないです。

 

「私、火葬は嫌なんだよね」

「なんだって?」

「だから、火葬は嫌なの。死んだ後に焼かれるのはなあ」

「それ、焼き肉食べながらする話?」

「この世界から本当にいなくなっちゃうみたいじゃん。皆に食べてもらうとか無理なのかな」

「肉を食べながら死体処理の話はやめにしよう」

「膵臓は君が食べてもいいよ」

「聞いてる?」

「人に食べてもらうと魂がその人の中で生き続けるって信仰も外国にあるらしいよ」

(『君の膵臓をたべたい (双葉文庫)』p.31-32、会話部分のみ抜粋)

 

こんな具合に。

こういうやりとりが無かったら、

 

は…はやく

くぁwせdrftgyふじこlp

 

と思っていたところなんだと思うんだけど、

私は堪能しました!

この若い2人のやりとりを!!

 

桜良も頭の回転がいいけど、志賀春樹のペシミスティックでペダンティックな反応が読んでいてとても心地いい。

 

物語の中で、

桜良と志賀春樹は、お互いに性格が正反対に違う人間と思いながら惹かれていき、

お互いにお互いを武士みたいに尊重しながら、短い時間に高めあっていくんです。

 

ちなみに、全編通して、私がいちばん美しいと思った記述はこちら。

 

それから僕は、彼女と人生で初めての経験をした。人と関わりの乏しい僕には、二人でただひたすらに素直な言葉を紡ぐ作業の名前がなんなのか分からなかった。だから、彼女の言葉を借りる。

彼女はそれを仲直りと呼んだ。

(『君の膵臓をたべたい (双葉文庫)』p.196)

 

意味分からなくて、2回読んじゃいました。

いや、意味は分かったんだけど、え、あれ?初めての経験って、それ…?

 

この美しい文章を読みながら、

自分の薄汚れた魂を感じてしまった。

ここで起こっているのは、本当に、バーバルな、文字通りの「仲直り」でした。

 

 

カワイイネ……^^

 

 

 

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春(樹)を選んで、桜(良)は咲くんだもんね

 

 

で!!!!

こんなに春樹に思われて、大事にされた桜良の、

「相手(=志賀春樹)からどう思われているかという推測」が、これなんですよ。

 

これは単に私の都合のいい勝手な解釈だけど、君は、私のことをどうでもいいとは思ってなかったんじゃないかな。

(『『君の膵臓をたべたい (双葉文庫)』p.290)

 

っておい!!!!!!

いったいこれは、どのレベルの謙遜なんでしょうか…!

青春の、若いことのいいところなんて、宇宙の高さまで思いあがって、うぬぼれでのぼせあがれることなのに。

 

しかも桜良の場合は、志賀春樹とのやりとりを経てきて、

いろんな証拠が積みあがってるわけなんだから、

私のこともう好きなんでしょ?

くらい、普通に言っちゃえばいいのに、

 

好きになりかけてたでしょ?

でもなく、

嫌いじゃなかったでしょ?

でもなく、

気にくらいはなってるでしょ?

でもなく、

 

単に

私の都合のいい

勝手な解釈だけど、

どうでもいいとは思ってなかった

んじゃないかな。

 

ってどれだけオブラートに包むううううう!!!!

BOC オブラート フクロタイプ 100枚

 

嗚呼!!!

どうしてどうして!!!!!

 

人間との関係って、こうやって作っていくものだとしたら、

私はもう根本からぜんぜんダメだ。なってなかった。出直しだ!

 

例えて言えば、

クレヨンで殴り描きしかしてこなかった人間が、

スーラの点描を見せられたらこんな気持ちかもしれない。

 

ここにあったのは、

恋心を寄せ合う二人の物語というよりは、

ライバルのような、生き方を承認しあう関係性だったのであって、

最後まで読み終わったときの私の気持ちは、

財前五郎の「心より恥じる。」が、少しは分かったかもしれない。

出直すしかない気持ち。

 

「おまえら~!早くくっつけよ~!」は、

感想として、いちばん幼い、いちばん違う、いちばん残念な、いちばん浅い、薄っぺらい感じだったんだなと…思いました……私の中身は中学生男子か!

ごめんなさい…!!

 

私もいつかは、

 

関係性に容易な名称を与えず、

互いの存在を認め、人間性を高めあいながら、

丁々発止のやりとりを楽しむ

という至高な遊びに興じたい。

(と思っている時点で全然ダメそう)

 

そういう関係性…に似たものがひとつでも人生の中に築けたらと思いました。

 

多分私は、恋愛めいた感情には、手早く安直に「好き」という名称を与えたくなるんです。

でも、友情は、友情と呼ぶしかないそれは、恋愛よりももっと実は、甘くて優しくて、峻厳なものなのかもしれない。

恋愛とはまた違うやり方で、痛烈に自己と相手に向き合わせてくれる。

 

だから、この本に書かれている二人の、

容易には恋愛に傾斜しなかった展開、

感情の、激流ような推進力と、それと同時に押し留める力の拮抗、

それを見せた、そこにある二人の魂に最大の敬意を払いたくなるんです。

 

ホントに…この物語に出会えてよかったです。

 

あと、最後に。

「重病人がその重病で死ぬとは限らない」

というのは本書が残した重大なテーゼのひとつだと思うので、

それも心に留めておきます。

 

つま子

得がたい読書体験でした☆

 

今日もいい一日になりますように!

 

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