おはようございます。
梅つま子です。
夏の読書シリーズとして、
この本を読みました。
夏休み、母親である自分は宿題はないし、
むしろ子どもの世話で忙しいくらいのものなのに、
なぜか「夏休みなんだから本を読まなきゃ」と思っている。
課題図書&読書感想文の呪いがまだ効いているようです。
とはいえ、呪いでもないとなかなか読書もできないので、
この呪いは、すすんで呪われたほうがいい、ありがたい呪いでもあります。
中野 信子/ジェーン・スー 小学館 2019年06月27日頃 売り上げランキング :
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対談形式で進む本で、
ジェーン・スーさんと中野信子さん。
お二人くらいに頭が良い人なら、
「女に生まれたこと」に関しての思考は一通り済んだことなんだろうと思う。
もう結論がつきまくっていることだと思う。
もし自分だったら、
こういうテーマで話すのは、もう自分にとって結論が出たことだからいいよ、
そういうこと話すのすらもうなんだかなあ、って感じだなあと思うのに。
弁が立ち親切なお二人は、
読者のために、どういうことが、彼女たちそして社会には起こっていて、
どういうふうに考えたのか、
わかりやすく理路を説明してくれるのがありがたい。
この本で得られる結論は、
私がこれまでもっていたものとはそう変わらなくて、
「女性であることって、
小さなものから大きなものまで不便や不公平ががたくさんある。
そのなかで、
なぜそうなっているかを理解し、
自分個人としてはどういう戦略をとっていくかを考えていく」
ということになります。
執筆の時点で、
スーさんはパートナーありの未婚で子どもはなく、
中野さんは既婚で子どもはない人で、
お二人とも自分の経済基盤をしっかり築いている人たちです。
自分とは違う人生の選択をしている人たちなのですが、
お二人が自分の選択を絶対として他を排除しておらず、
女であることがどういう事態を招いているかを大きな目線で捉えた上で、
私のように、子どもがいて、もろもろの要素を考慮して働く時間を抑えていることを選ぶ人間を切り捨てない書き方をしていることに、
私は勇気を得ました。
同時代(スーさんは私より6歳、中野さんは私より4歳年上)にこういう女性の書き手がいるのは心強くてうれしく、
私も考えたり書いたりしていこう!と思える。
中野さんの本は最近読んだばかり。
こちらにレビューを書いています。
以下に引用する2箇所は、本書の大筋とは外れているかもしれないけど、
私が関心を強く持ったところです。(太字強調は梅つま子によるものです。)
スー 男性からモノ扱いされることもそうだけど、「美人すぎる××」もひどい。あれは、その職業に就く女性は不美人だと思われているからああいう言い方になる。そして、美人は努力して特別な技能を獲得する必要などないとも思われている。どっちにしろ、失礼。美人、楽じゃないね。中野さんも美人で損したことある?
中野 美人というよか、いわゆる「十人並み」に学歴という下駄を履かせた容姿なのだと思うけれど……、「華麗な経歴なのに、セクシーですね」って言われて、「はあ?」て思ったことはある。
スー 頭いいのに性的な見た目をしてるんだね、って意味だよね。全方位でひどいな 。
(『女に生まれてモヤってる!』49ページ )
ここでスーさんは、中野さんに、中野さんのことを”美人”だと思っているということを伝えているのですが、
それに対する中野さんの返事が練れている。
そんなことありませんよという否定ではなく、
「美人というよか、いわゆる『十人並み』に学歴という下駄を履かせた容姿」だと言い直す。
これはすごい。
自分が他者から受ける外見の評価の、非常に巧みな微調整。
真っ向から否定せず、しかし方向性は確実に変える。
具体的には、嫌味っぽい感じを極限まで減らす。
「美人ですよね」という言葉は、
相手の気分を害さないように上手に回避しないと、
とんでもなく嫌味になる爆弾なのだと思いますが、
「美人というよか、いわゆる『十人並み』に学歴という下駄を履かせた容姿」って、100点満点の返しじゃないでしょうか。
「美人というよか」という言葉の語尾でちょっと滑稽味をつけつつ、
学歴があるから注目してもらえているだけで、『十人並み』の範疇です、と答える。
聞いている方が不愉快にならず、
「まあ、そう言われてみれば、そうか?」と納得もできるような。
こんな巧みの技巧、ある?
高度すぎるだろう。
自虐未満の落としどころを即座に見つけられるか?
中野さんは、「美人ですね」といわれたときの回答方法をあらかじめ持っているのかな?
それともこれはスーさんとの打ち合わせ済みなのか?と思うくらいすごい。
続いては結婚に関しての対話。
スー 決め手になるような出来事とかあった?
中野 恋愛と違うとか言っちゃうと旦那ちゃんに悪いんだけど、「この人といた方がちゃんと生きられる」っていう感じがした。
スー わかる、めちゃくちゃわかる。私は結婚してないけど、その感じはすごくわかる。私にとってパートナーって、真人間でいるための漬物石なんだよね。
(『女に生まれてモヤってる!』126ページ)
真人間でいるための漬物石!
このメタファーは秀逸だなあと思いました。
スーさんは、(書かれたものから受ける印象で)高潔なお人柄だなあと思うし、
働く力においても、一人でもまったく問題なく生きられそうな方だと思うのですが、
パートナーがいて、2人になったときのバランスを高く評価しているんですよね。
経済的なことや物理的な便利さではなくて、
「相手がいることが心にどう効くか」という観点から評価している。
私はこういう見方が好きだな。
『ビッグバン セオリー シーズン1-12』のシェルドンも、
シーズン9の10話で、
パートナーのエイミーのことを指して「彼女は僕の心の柔軟剤」と言っていたし。
能町みね子さんはパートナーどう言っていたかな…。
『結婚の奴』読み返したい。
あとは自分のメモですが、これから読みたい本3冊。
苧阪直行 新曜社 2014年03月15日頃 売り上げランキング :
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オルナ・ドーナト/鹿田 昌美 新潮社 2022年03月24日頃 売り上げランキング :
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エミリー・マッチャー/森嶋 マリ 文藝春秋 2014年02月24日頃 売り上げランキング :
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こういうお二人がタッグを組んで対談本を出してくれることがありがたいです
今日もいい一日になりますように!