娘が「なんで?」を連発し始めたことを、以下のように書いていました。
・「なんで?」が爆発しています。
「なんで車止まっているの?」←ドライブ中に赤信号で停止中に。
「なんで目を開けてるの?」←絵本を読んでいる時、こぐまちゃんは目を閉じているのに、ぬいぐるみが目を開けたままなのを見て。
・・・いずれも、自分で答えがわかっているのに、あえて「なんで?」って言っているようです。会話を楽しんでいるのかなー。
今もって、まだ「なんで?」期とも言いたくなるような、なんでなんで星人の娘です。
バスに乗れば、
「なんでバスは揺れるの?」
「なんで今バスは止まってるの?」
といった具合です。しかも毎回!
「バスは曲がるとき揺れるんだよ」とか、
「赤信号だから止まってるんだよ」とか答えますが、
娘を観察していると、「なんで」の多用は、もちろんその字義通り、なぜなのかその仕組みを知りたいということもあるとは思いますが、
「なんで」を使用すると、大人との会話が結構成り立つ、大人がこっち向いて自分との会話に真剣に向きあってくれる、ということに、娘は気づいているんだろうなと感じます。
「~したら駄目だよ」「危ないよ」という一方的な注意でもなく、
「~できて偉いね」「大きくなったね」「お姉さんだね」といった称賛でもなく、
会話ができることが新鮮だと感じているのではないかな。
これまで、彼女に向けられる言葉の多くは、大人からの指示であったり、評価だったと思いますが、「なんで?」を使うと、大人と(少なくとも、形式的には)対等に対話ができる、ということが、単純に面白いんじゃなかろうかと思います。
ところで、かじった程度の知識なのですが、
言語学では「隣接ペア」という概念があるそうで、
「質問」と「応答」は隣接ペアであり、対となって会話を成り立たせる最小単位のひとつだと聞いたことがあります。
発話者が問いを発したら、受け手は返答を求められ、それを隣接ペアとして会話が成り立っていくと考えると、
子どもであっても、相手が「なんで?」と聞いてきたら、
その発話の受け手は「~だからだよ。」という答えを与えることが期待されます。
さらにそこには、大人と子どもの知識の差があって、
知識を持つ側から、持たない側へと授けることへの期待も重なって、
親にとっては、”質問に適切に答えてあげなきゃ”というプレッシャーになるのかなと思います。
なので、実際のところ私も、娘からの質問に対し、隣接ペアを完成させるべく、
「信号が赤だからだよ。赤信号のときは、車は止まるんだよ」
と答えていたわけなのですが。
他方、娘が求めているのが、会話の継続であるならば、
私は別に、正しい答えをわかりやすく伝えようとばかりしなくとも、
隣接ペアをちょっとずつ崩し、ずらしていく試みをしてもいいのかなと思っています。
「なんで今バスは止まってるの?」と聞かれて、
さすがに「今日は暑かったねえ」とは言えないのですが、
「なんでかねえ。どうしてだとおもう?」とか、
「さっきも止まったよねえ。なかなか進まないねえ。今日はいつもより時間かかるねえ」
とかなんとか、質問に対して答えを即座に与えるのではなく、ずらしながら、会話を続けてみてもいいのかなと思います。
「すくコム」にも、子どもからの「なんで?」にどう答えたらいいか、の記事が載っていました。
どう答える?子どもからの質問「なんで?なんで?」|育児支援サイトすくすく.COM
ところで。
大人の世界に生きてるということは、言葉の世界に生きてるということとほぼ同義だなと思います。
だからこそ私も、娘の出産時、産休に入ったことで仕事仲間とのやりとりが断たれ、急に頭が退化したように思い、言葉を使いたくてしょうがない時期がありました。
仕事をしていると、相手の言葉を理解し、行動することがとても大事だと思いますが、
育児では子どもの言葉を額面通りに受け取るべきでない、あるいは受け取るとイライラしたり傷ついたりするときもあります。
大人の世界では、言葉というものは(もちろん、冗談として発する言葉もあるけれど、)慎重に選ばれるべきもので、発された言葉は信頼されるべきものだと思います。
そういう世界に生きているのに、子どもが使う言葉の世界を理解しようとするのは、とてもきついことだと思います。
先日放送された「すくすく子育て」では、”パパの育児”が特集されていました。
具体的には、以下の質問に関して、思うところがありました。
子どもに「パパよりママ!」と言われてしまう。どうすればいい? | 子育てに役立つ情報満載【すくコム】 | NHKエデュケーショナル
外では楽しく遊んでいたのに、家に帰ってオムツを替えようとすると、「ママがいい!」と泣き叫んで嫌がる
という、男性からの相談です。
我が家でも、娘が0歳~1歳くらいの時、顕著に父親を嫌がっていた時期があり、
夫は娘から「パパ、いやっ。キライ!あっち行け!」と言われていました。
子どもの言うことだとわかってはいたって、やっぱり字面通りに受け取ってしまうもの。
「パパにそんなこと言っちゃダメでしょ」、と私からも怒ったけれど、これはしばらく続きました。
今でこそ、かなりの仲良しになりましたが、この時はホントに何だったんだろうというくらい、娘は夫を嫌がっていました。
娘は、言葉を使い始めてまだほんの2,3年。
体だけでなく言葉もよちよち歩きをしながら、使い方を確かめながら使っているんだってわかってあげないとな。
娘の日本語は今後ますます上手になっていくだろうけれど、それでもまだまだ初心者です。
生きている限り言葉を使って、
誤解し、誤解され、
傷つき、傷つけられ、ということは、避けられないと思う。
思い悩んだりすることもたくさんあると思う。
安易な言葉を使ったりせず、思考力を身に付けて、豊かな言葉の使い手になってほしいです。
そのために、親である自分が、豊かな言葉の使い手であるように努力したいものです。