明日も暮らす。

明日も暮らす。

シンプルで暮らしやすい生活を目指しています。オンライン英会話(英検1級)と空手(黒帯)が趣味。大学院博士課程修了(人文科学)。2児の母。

湊かなえ『告白』を日本語と英語で読みました。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

おはようございます。

梅つま子です。

 

湊かなえ『告白』を読みました。

 

告白

湊かなえ 双葉社 2008年08月
売り上げランキング :
by ヨメレバ

 

読んだのは2回目で、映画も観たはずなのですが、

すっかり内容を忘れてしまっていて、

まるで初めて読んだかのように(!)楽しめたのでした。

 

本書をこれから読む予定の方は、ネタばれになってしまうところがあるので、

ぜひ先に本書をご覧くださいね!

 

 

 

この本を(再び)読んだ理由

さて、楽しめた…といっても人が亡くなるミステリー。

娘を失った中学教師の女性の語りを皮切りに、

事件にかかわる人たちの一人称で次々と事件前、事件後の様子が語られていきます。

 

どんどん展開していくのが面白く、怖く…

本屋大賞を受賞しているのもうなずけるのでした。

 

この本は私の英語の先生と一緒に読みました。

いつか日本人作家の本を読みたいな、と思っていたのですが、

先生が「日本人が書いた本を手に入れたよ!」と見せてくれたのがこれ。

 

Confessions (English Edition)

 

それならば、と私も日本語版と英語版を手に入れたのでした。

それにしても、誰も登場人物のいない教室が描かれた表紙、

インパクトがあって怖すぎです!

 

本書から3箇所引用します

この本の怖さであり魅力は、

登場人物が常軌を逸していて、極端な行動に走るんですが、

その他の点では筋の通った常識、繊細さ、気遣いを見せるところ。

 

考えてみれば人間ってそうなのかも。

全部が全部、理解を超えることをしてくる人なんて稀で、

だからよく事件などで犯人を知る人が、

「こういう事件を起こす人とは思えなかった」とメディアに語るのでしょう。

 

なるほどなあ、面白いなあ、と思った箇所を引用します。

せっかく英語で読んだので、英語での該当箇所も引用してみます。

 

受験を前にして「この子はやればできるんです」と保護者の方からよく言われるのですが、この子、の大半は分岐点で下降線をたどることになった人たちです。「やればできる」のではなく「やることができない」のです。

(『告白』p.51)

 

Those of us who serve as homeroom teachers for students preparing for the high school entrance exams are used to hearing parents tell us that their child could succeed if he would "just try." But more often than not, the child they're speaking of has reached this juncture and followed the downward curve. It's not so much that he hasn't he tried; he's simply no longer even in the game.

 

作者の湊かなえさんは教員経験がおありの方なので、

まさに実感がこもって作中主体に語らせているところだろうなあと想像しつつ、

「やることができない」が意味することを考えると怖いです。

やることができないのは、何故なんだろう。

やることができないことに対して、

何ができるんだろうか、できることがあるんだろうか?と考えたりします。

「下降線をたどる」の「followed the downward curve」は英語学習者として覚えておきたいところ。

 

次は、中学生の子を持つ母親の日記から。

 

社会全体がそのような存在を受け入れてしまったのだから、仕方がないことだとは思うのですが、それでも私は、自分の子供が「ひきこもり」だの「ニート」だのと平気な顔をして言える親が信じられません。恥ずかしげもなく、よくそんなことが言えるものです。

(『告白』p.142)

 

Once society accepts these names and positions, there's very little we can do about it―but I still can't understand parents who are comfortable calling their own child a hikikomori or a NEET. How can they hold their heads up in public?

 

こんな考え方をしていると苦しいだろうし、続かないだろうな…と思った箇所。

一見、責任感と使命にあふれているようでいて、自滅を招く危険な考え方だなと思います。

 

この本が残す大きな問いは「母親の責任とは?」だと思いますが、

この箇所もそのひとつ。

母親がそこまで一人で背負わなければいけないと思わせてくる社会って何なのだろう?

 

そういえばこの本を最初に読んだとき、

「母親になるって怖いことだ」と震えた気がする(でも忘れて母親になっている)。

 

「恥ずかしげもなく、よくそんなことが言えるものです」が英語だと、

How can they hold their heads up in public?

になるのですね。簡潔。

 

最後の引用はこちら。

中学生男子の語りです。

 

殺意とは一定の距離が必要な人間が、その境界線を踏み越えてきたときに生じるものなのだと、初めて気付いた。

(『告白』p.256)

 

Human beings have a fundamental need for physical and emotional space, and the desire to extinguish another life can arise when the boundaries of that space are violated.

 

これも一見まともなことを言っているように見えます。

英語だとHuman beings have a fundamental need for physical and emotional spaceまでは、そうだよね、人間には距離は必要、と思わせつつ、

「the desire to extinguish another life can arise...」と続いて狂気の世界へようこそです。

いきなりextinguish another lifeに飛ぶ恐ろしさよ。

何故そこで人の命を消そうと思うの…。

 

おわりに

Wikipediaによると、この作品は「イヤミス」(読んだ後に嫌な気分になるミステリー)という言葉が生まれるきっかけになった作品のようです。

一緒に読んだ英語の先生も「horrorというよりはchiller(背筋が凍る)だね」と言ってました。

 

もちろんフィクションだけれども、

追い詰められる母親とか、

機能しきっていない学校教育だとか、

それぞれに思い当たるところがあって、

読者が何らかの具体的な経験と結び合わせ、

「そういうことがありえるかもしれない」と思うことができてしまう作品なのだと思います。

 

ちなみに、この世界にずーんとたっぷり沈んだ先生と私は、

「明るい、希望の書が読みたい!」という気になり、

今はこちらを読んでいます。

 

ちょっととっつきにくい学術書なのかなと思ったら、

「世界の見方」をユーモラスに教えてくれる、目からうろこを落としてくれる本でした。

こちらも機会があればブログで改めて紹介したいと思っています。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス)

ハンス・ロスリング/オーラ・ロスリング/アンナ・ロスリング・ロンランド/上杉 周作/関 美和 日経BP 2019年01月12日頃
売り上げランキング :
by ヨメレバ

 

つま子

また一冊、記憶に残る読書ができました☆

 

今日もいい一日になりますように!

 

*:..。o○ 応援クリック、ありがとうございます ○o。..:*

 にほんブログ

村 ライフスタイルブログ シンプルライフへ  にほんブ

ログ村 ライフスタイルブログへ

プライバシーポリシー

© 梅つま子